|
骨盤底弛緩の手術で入院する患者さまへ 女性泌尿器科専門医 奥井識仁(本名 奥井伸雄) 今回の入院は、がんばってください。 いままでいろんな方を入院治療していますが、基本的には合宿みたいな入院だったとよくいわれます。ぜひ、退院するときには、よい姿勢の体を手に入れてください。 骨盤底弛緩の対象 骨盤底弛緩の対象は、膀胱瘤(ぼうこうりゅう)、直腸瘤(ちょくちょうりゅう)、子宮脱(しきゅうだつ)、子宮下垂(しきゅうかすい)、子宮摘出後の膣全脱(ちつぜんだつ)です。同時に、尿道狭窄内視鏡下拡張手術や、膀胱水圧拡張手術をするケースはあります。ただし、外痔核根治術(がいじかくこんちじゅつ)と内痔核根治術と肛門狭窄拡張術は、感染の関係から同時には行いません。 手術は砕石位(出産のポーズ)でおこないます 手術の麻酔方法は麻酔科の先生に一任しております。もし全身麻酔がよい場合は、Drに直接頼んでください。全身麻酔を希望される方は、麻酔科のDrが判定できるように呼吸器機能検査を入院時にうけていただきます。手術は、砕石位といって、出産するときのポーズをとります。非常に軽度な場合をのぞいて、手術は麻酔をいれて1時間から2時間かかります。ただし、出血するような操作は、事実上15分から45分以内です。ですから、この時間をこのポーズをとりますので、術後筋肉痛になりますが、このことはあらかじめ御了承ください。 手術方法は、基本手術を選択します 手術方法として、当院では総数で、関東で一番か二番に件数が多いのですが、ほとんどに基本手術を採用します。これは、安定性を重視するからです。そのために、もしあらかじめの説明以上の難しいテクニックを必要とするケースでは、本人をおこしてお聞きすることがあります。本年度は、2度本人にお聞きしております。考え方として、術後ある程度、軽度な歩行などでもいいですから運動と姿勢をこころがけてくだされば、骨盤底に緊張をあたえられる程度の手術をします。この理由としては2つあります。1つは、基本的な手技が10年以上のデータに基づいたものであること。2つめが、必要以上の高度なテクニックを使用して筋肉に緊張をあたえると、術後も痛みがあるかもしれないことからです。せっかく手術しても、筋肉痛は別として、何年も筋肉が引きつるようなからだになっては、リハビリに専念できないと思います。 手術は、泌尿器科の手術と婦人科の手術を交互におこないます 手術は、具体的には、尿道からファイバースコープを挿入しておこなう泌尿器科の手術と、膣からおこなう婦人科の手術を組み合わせたものです。従来の泌尿器科術式の尿道からのファイバースコープによる検査・手術を少しおこなったところで、従来の婦人科術式の膣からの手術をおこない、また膀胱にもどり、また膣にもどるという繰り返しを行いながら、手術の精度を高めていきます。ですから、術後は、尿にも血が出てくるときや、排尿すると尿道がしみる場合がありますが、すぐに治ります。 また、術後は膀胱炎にならないように気をつけてください。2分野の同時手術であるため、術後の膀胱炎になる率が6%前後あります。退院時に抗菌剤を処方しますので、膀胱炎になったとおもったら、すかさずのんでください。簡単な膀胱炎でしたら、なった当日なら抗菌剤を1日服用するだけで改善します。 手術当日の処置について 手術当日朝は、浣腸をしてください。前日のよる9時から何も食べずに飲まずにいますので、浣腸後に急に立ち上がったり動いたりすると、クラクラする人がいます。落ちつついて、ゆっくり動いてください。骨盤底の手術は、どうしても直腸と肛門のすぐそばで手術をしますので、便がのこっていては手術ができないのです。どうぞ御協力ください。 術後は、1晩は安静にします。この時、よく聞くのが、腰がいたいということです。これは、一日中寝てすごして、そして砕石位のポーズをとっていたために、腰とおしりの筋肉痛になるのです。このときは、寝返りをしてかまいません。タオルをまるめて、腰の下にひいたり、付き添いの人に腰のマッサージをしていただいていいでしょう。ただし、起き上がると、翌日頭痛のする人がいますので、起き上がるのはやめてください。テレビを見ることはできます。座薬は、こうした痛みにもききますので、看護師さんにナースコールをしてください。 手術翌日について 手術翌日朝に、看護師さんが、尿道のカテーテルをぬいてくれます。これによって歩くことができるようになります。立ち上がって、ゆっくりあるいてみてください。一日中寝てすごしていますから、少々足の違和感がありますので、落ち着いて歩きましょう。このとき、いままで気になっていた膀胱瘤などの不快感が消えているはずです。ただし、おしりは筋肉痛でいたいかもしれません。本日からリハビリがはじまります。リハビリの先生が、骨盤底筋体操をふくめた全身体操のオリジナル・ガイドブックを作成しておりますので、その指導があります。 手術翌日で退院される方は、およそ10%ぐらいいます。調子がよいのでしたら、それでもかまいません。 手術翌々日について 手術翌々日には、体は6割はもとにもどっています。日常生活も十分にできるでしょう。この日に退院される方は30%ぐらいいます。この日から本格的なリハビリがはじまります。当院の規則で、リハビリに通院しますと、一度は整形外科Drの診察をうけることになります。リハビリの先生、整形外科のDrのどちらも親切ですから、どしどし質問してもかまいません。 骨盤底の手術後はすでに安定期にはいっていますので、ある程度のリハビリで大丈夫です。しいてあげれば、30kg以上のものを急激にあげたり、自転車に1時間以上のるようなことは難しいですが、日常生活の簡単なものはほとんど大丈夫です。ですからリハビリをがんばってください。 術後のシャワーは、手術翌日から、湯船は1週間後からはいれます。プールは1か月後からです。術後半年の間、膣からぬった糸が溶けていきます。そのたびに少しですが出血があります。これは気にしないでください。 退院までの日々について 退院までは、自分でリハビリを継続していただきます。60%の方は、リハビリをして退院されますので、その目安は、リハビリの先生から『オリジナル・ガイドブック』が全部合格した時と考えてください。短い方で2日、長い方で10日、平均術後5日でマスターされます。 退院までに腰痛の悩みや、肥満に対するダイエットの悩みがある方は、リハビリの先生に相談してみてください。多くの方が、当院のオリジナル・ガイドをマスターして、肥満から改善できています。 退院後の日々について 外来通院は、退院後2回で卒業になります。1回目は、術後4週から8週までに、2回目は術後3か月から6か月の間にあります。特に心配なことがあったら申し出てください。お近くにかかりつけの家庭医の方がおられましたら、あらかじめ申し出てください。 退院後の悩みで多いものが、腹痛です。これは、多くの方の手術以前は、姿勢がわるく、しかもおなかやおしりのおもみが、骨盤底に負担になっていたのを、手術で取り除いたからです。つまり骨盤底をひきしめることで、おもみのかかる部分がなくなり、ついつい腹筋に重みがかかるために、下腹部の痛みになります。これは、よい姿勢をとり、歩行運動をするとなおることが多いです。 膀胱炎については、前にも書いたように気をつけてください。予防として、ビタミンC、B6、B12を摂取することと、水分(尿量にして1200から1800ml)をとるようにしてください。 膀胱拡張を追加された方は、術後のはじめのうちは手術の効果で、尿がよくたまります。この間に、尿をためるトレーニングを、排尿日誌を書きながらおこなってください。 術後の排泄について
排泄の姿勢は、前かがみでおこなってください。ルソーの考える人の像をおもいだしてください。前かがみで、肘をついています。この姿勢をとりますと、排便と排尿がしやすくなります。
骨盤底筋体操について 骨盤底筋体操については、リハビリ科からオリジナル・ガイドブックがでます。それをよく読んでください。ちなみに、私の絵で説明をかくと、こんな感じです。当院滞在中は、リハビリ科ガイドブックの指示にしたがってください。ご参考までに。
ほかの運動方法について(レジスタンス運動) 骨盤底体操以外の運動方法についても、リハビリ科のハンドブックにのっています。ご主人といっしょにやせる運動として継続されるのも一案です。こちらには、一般的にやせる運動として有名なレジスタンス運動をあげておきます。ご夫婦で気にいったものがあったらしてみてください。(モデルは、私と娘です) スクワット 15回 x 2セット
シットアップ 15回 x 2セット
バレエスクワット 15回 x 2セット
ひざたてふせ 15回 x 2セット
うでたてふせ 5回 x 2セット
水中の運動方法について(有酸素運動) 骨盤底弛緩の方の多くは、姿勢の悪さや、体脂肪の増加により、骨盤底に過剰の重さがかかっていることがおおいです。このような方に、いきなりランニングを指導したら、膝をわるくするだけになります。そこで、プールでの運動をおすすめします。 まず有酸素運動というものについて理解してください。イラストを用意しました。
水の抵抗をうけながら、笑顔であるいてください。ゆっくり足をおおきくだします。
次に、うでをあげて、歩いて見ましょう。腰を振りながら、あるいてきます。このことで、ウエストの引き締めをします。 日常生活について気をつけること 日常生活について気をつけることは、食事と水分です。最近は、脳梗塞の予防に血液をさらさらにしましょうと、水分をたくさんとることを指導するケースが増えていますが、必要なのは、1日尿量で、1200mlぐらいなのです。 そのためには、排尿日誌を書くことをおすすめします。排尿日誌は書きすぎると、かえってストレスになりますから、週に1回程度で書いてみるといいと思います。記録用紙はなんでもいいでしょう。入院中は差し上げます。尿をはかるコップは、100円ショップでもうっている軽量カップ(当院の売店にもおいております)がよいでしょう。
では、ご健康をおいのりします 最後に、今回の入院が、よいものになるようにお祈りしています。 がんばってください。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||